Webマーケティング施策において効果を出し、事業を成長させていくために欠かせないのが、KPIです。KPIを適切に設定することで、各施策において注力すべきことが明確化され、効果検証を行いやすくなります。本記事では、特にオウンドメディアのKPI設定に焦点をあてて解説します。
目次
KPIとは?
KPI(Key Performance Indicatorの略)の設定について知るためには、まず、KGIについて知る必要があります。KGIとは、「Key Goal Indicator」の略で、「重要目標達成指標」と訳されます。これは、企業や部署、事業などにおける、四半期や半年、一年などの中長期的なスパンでの最終目標値のことです。
KPIは、このKGIの達成度合いを評価するための、業務・施策単位での定量的な指標です。「Key Performance Indicator」の略で、「重要業績評価指数」と訳されます。
KPIは、ひとつのKGIに対して複数設定されることがあります。また、1週間や1カ月程度の比較的短いスパンで見直され、状況に応じて変更することもあります。KPIは、KGIを達成するためのプロセスといえます。
オウンドメディアのKGI/KPIとは?
オウンドメディアにおけるKGIとは、オウンドメディアの運用目的であり、オウンドメディアがあることで関連する企業や部署、事業にどんなメリットをもたらしたいか、ということになります。具体的には、次のような指標が考えられます。
- 商品掲載サイトへの送客数
- 資料ダウンロード数
- 会員登録数
- 採用応募数
- イベント等の申込数
- 問い合わせ数 など
これらのKGIを達成するために設定されるのが「オウンドメディアのKPI」です。オウンドメディア運用の目的達成に向けて、現状の良し悪しを判断する基準として設定し、運用改善のヒントを探るために活用します。
具体的には以下のような数字がKPIとして設定されることが一般的です
- 検索順位
- Googleのインデックス数
- PV数
- UU数
- 直帰率
- 離脱率
- 滞在時間
- 記事作成数 など
また、SNSやメルマガなどからオウンドメディアへ流入させるような外部配信を合わせて行っている場合は、そのリンククリック数・遷移数が、オウンドメディアのコンテンツ評価の補助的なKPI(サブKPI)となります。
なぜKPI設定が大切なのか?
なぜ、オウンドメディアにKPI設定が必要なのでしょうか。その理由として、次のことがあげられます。
作成すべきコンテンツが明確化される
オウンドメディアにおいて、KPIは、KGIを達成するためにどのようなコンテンツ作成や改善が必要かという道標になります。
たとえば、PV数を上げるのであれば、まずは流入してもらえるコンテンツを作成する必要がありますし、直帰率や離脱率を改善するのであれば、流入元とコンテンツ内容の齟齬がないかを見直す必要があります。
コンテンツのアイデア出しにはさまざまな方法がありますが、KPI設定があれば、何を目的としてそれらのコンテンツを作成・改善すれば良いのか、方向性が明確です。
PDCAを回しやすくなる
オウンドメディア運用では、何を指標として良いか分からない、効果が出ているのか分からない、効果が出ていないがどこを改善して良いか分からないという状況が起こりがちです。
KPIが設定できれば、KPIを指標として各コンテンツの効果検証を行い、達成できなかった場合はコンテンツの改善やKPIの見直しを行うというように、PDCAを回しやすくなります。
KPI設定により、PDCAサイクルのスピードが上がり、KGI達成に向けてより多くの改善を重ねられます。
メンバー間での意思疎通がスムーズに
オウンドメディアの運用には、マーケティングや制作、営業などの複数のチーム、複数のメンバーが関わります。社内のメンバーだけでなく、外注業者や社外のフリーランスに業務を委託することもあるでしょう。
そういった体制でも、KPI設定により、コンテンツの方向性について共通認識を持つことができます。
たとえば、マーケティング視点で数字の取りやすいコンテンツと、制作視点で望ましいコンテンツというのは食い違うことがあります。
しかし、KPIは何かということに立ち戻ることで、KPIを達成するためにはどのようなコンテンツが望ましいのかという共通の視点に立てます。
また、KPIに対してコンテンツを作成して、その効果検証を重ねることで、どういったコンテンツが効果的なのかという共通の知見も徐々に蓄積されます。
KPIの設定方法
KPIの考え方
適切なKPI設定とは、次の条件を満たす必要があります。
- 施策の実施により直接改善できる
- 改善することでKGIに影響する
- 日・週・月などの短期かつ定期的に、リアルタイムのデータ取得が可能
KPI設定方法 3パターン
KPI設定には、次のような方法があります。
- ゴールから逆算する:KGIを達成するために必要な施策と指標を細分化して設定します。もっとも一般的なKPI設定方法です。
- 競合を分析する:競合メディアがあり、参考になる数字が公開されている場合は、それを参考にします。たとえば、記事の更新頻度やSNSのエンゲージ数などが分かりやすい数字です。
- 過去実績を基にする:過去に同様の施策を実施したことがある場合、その数値を参考にします。運用代行業者などに外注する場合は、事例を基にシミュレーションをしてもらえることも。
KPI設定のポイント
KPIを設定するときに作成したいのが、下図のようなKPIツリーです。
KGI達成には、ひとつではなく複数の施策とそのKPIが関係しています。KPIツリーを作成することで、KGI達成のために、どのようなKPIがどのように関係しているかを視覚化できます。
その上で、各施策についてPDCAを回し、そのKPIが最適なのかどうか、どの施策に注力することでもっともKGI達成に貢献できるのかを探っていきましょう。
失敗しないための注意点
KPI設定を失敗しないために、次の点に注意しましょう。
過大評価・過小評価をしない
KPI設定は、「攻めすぎず守りに入りすぎず」が理想です。
攻めすぎずというのは、用意できる社内体制やリソースを鑑みて、実現可能な数字にするということ。守りに入りすぎずというのは、あまりに簡単に達成できる数字にしないということです。
また、はじめに設定したKPIを絶対に守らないといけないというわけではなく、施策の進捗に合わせて上方・下方修正することも必要です。
現状を踏まえた調整をしながら、現実的かつ達成感のあるKPIを設定することが、チームのモチベーション維持にもつながります。
根拠のある仮説を立てる
KPI設定は、根拠となる情報やデータを基に、仮説を立ててKPIを設定することが理想です。
もし根拠となる情報やデータが不足している場合は、まずは着手した後にその結果を基にこまめにKPIを調整していきましょう。
社内だけで対応が難しければ外部委託も活用
オウンドメディアへの流入元としては、SEOやWeb広告の他、SNSやメルマガなどの外部配信を活用することもあります。流入元が増えるほど、追うべき数字が増えていきます。
また、オウンドメディアには、多数のコンテンツが存在し、運用を続けるほどにコンテンツは増え続けていきます。
KPI達成のためにはどのコンテンツをどう改善すれば良いのか、多数のコンテンツのなかをユーザーがどう回遊しているのかなど、コンテンツが増えるほどに、ここでも追うべき数字が増えていきます。
そのため、コンテンツや施策が充実するほどにPDCAを回すのが難しくなっていき、KPI達成に向けて結果が伸び悩むということも起こりがちです。
そういった場合、オウンドメディア運用の経験やノウハウを持つ会社に外部委託してみるのもひとつの方法です。
まとめ
オウンドメディアでも他のWebマーケティング施策でも、KPIの基本的な考え方は変わりません。まずはKGIを明確にした上で、その達成のためにどのような施策とKPIが必要なのかを探ります。
ただ、オウンドメディアの難しいところが、複数の流入元と多数のコンテンツがあることで、どの数値をどう参照すれば良いのかが分かりにくいというところです。このあたりは、経験とノウハウが必要なところといえます。
社内の体制やリソース的に無理がある場合は、オウンドメディア運用の代行やコンサルティングサービスも役立ちます。