インバウンドマーケティングやカスタマーサービスなど、様々な機能がオールインワンで利用できるクラウド型CRMプラットフォーム「HubSpot」(ハブスポット)。近年世界的に導入する企業が増えていますが、「実際に導入している企業の生の声を聞きたい」「自分が所属する業種に近い導入事例を知りたい」という方も多いのではないでしょうか。
そこで今回は可能な限り導入の目的や効果を含めた導入事例を調査しました。BtoBのみならずBtoCも含めた複数の業種を調査していますので、皆さんの業種に近い事例が見つかると幸いです。
1.HubSpotの概要と強み
各社の事例を紹介する前に、HubSpotの基本的な内容と強みをおさらいしたいと思います。HubSpotはアメリカでスタートしたサービスで、現在は世界中で広く利用されているインバウンドマーケティングのためのツールです。最近多くの企業が導入するマーケティングオートメーションツール(MAツール)としての機能以外にも、カスタマーサポートやホームページ作成のための独自CMSなどが1つのサービスとして統合した形で提供されています。なおかつCRM機能(HubSpot CRM)は100万件の顧客情報までは無料で利用することができるなど、費用面でも優位性があるサービスです。導入する企業は「オウンドメディアを立ち上げてリードの獲得に使いたい」「メールマガジンからの商談獲得率をあげたい」など、事業・サービスの課題に併せてHubSpotの機能を取捨選択し、必要な機能から始めることができます。
2.HubSpot導入事例10選
1.ソウルドアウト株式会社:マーケティング支援
これまで全国の拠点で営業活動を行うことで多くの企業の課題を解決していましたが、本来強みである営業力が仇となり、人件費の増大などの問題を抱えていました。かたや、自社サイトは月に数件問い合わせがあるかどうかという状況を改善するためHubSpotを導入。
一番目につきやすいと思われる問い合わせフォームの入力項目からお客様から取得する情報を見直し、すべてのリードに関する情報をHubSpotに集約。新たに立ち上げたオウンドメディアからの資料ダウンロードや定期的なメルマガ受信を希望するユーザーからもメールアドレスを取得し、現在では営業活動にかかる人件費を伴う新規の営業獲得はほぼなくなりました。
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2.株式会社ラクス:クラウドサービス及びIT技術者派遣
株式会社ラクスは主力のメール配信システムの新規顧客を、これまでリスティング広告に多額の予算を投入し獲得していましたが、競合増加や単価上昇でROIが悪化。広告に頼らない新しいマーケティング手法を模索する中で、インバウンドマーケティングの開始を社長自ら決断。ツール選定作業の結果「HubSpot」が選ばれました。
HubSpotでは主要顧客である中小企業のマーケティング担当者に向けたオウンドメディアを制作。ブログ記事などを掲載したり、更に深く学びたい層に向けたeBookをダウンロード可能とし、ダウンロード時の情報を元にメルマガやセミナーの案内を送付。その結果、半年で新規受注が10%増加、インバウンドマーケティングのROIも従来のリスティング広告と比較して2倍の効果があったそうです。
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3.ビジネスエンジニアリング株式会社:製造業向けシステムコンサルティング
ビジネスエンジニアリング株式会社は製造業のお客様を中心に、IT導入などのシステムコンサルティング業を展開しています。従来展示会などオフラインでのリード獲得が中心でしたが、オンラインに移行しようと見込み客向けのメールマガジンを配信しても大きな成果がなかったそうです。その中で大きなコストをかけずに利用できるMAツールを探していたところ「HubSpot」が唯一条件を満たしました。現在はHubSpotのテンプレート機能でメールマガジンも効率化でき、リード獲得数が400%まで増加しました。
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4.株式会社構造計画研究所:スマートロック機器販売
株式会社構造計画研究所は2017年、新規プロジェクトとしてスマートロック(インターネットを経由して複数の鍵を一元管理するIoTサービス)の販売を開始。同社はこれまで主にBtoB向けの販売を行なっており、BtoCを含むこの製品は従来と異なるマーケティング手法を取る必要がありました。「Webで集めた多くのリードをどう顧客としていくか」が課題となり、MAツールとCRMツールを統合して運用できる「HubSpot」を採用することになりました。初めてのMAツールの導入ということで「日本語対応」「国内のサポート体制が充実」している点も採用の理由として大きかったそうです。
導入後は営業活動の効率化に注力し、リードへのアプローチから商談完了までをHubSpotで管理した結果、複数のツールを使う際に起こりやすい商談の抜け漏れが防げるようになったり、重要な見込み客をより厳重に管理できるようになり、わずか6ヶ月でリード1,000件(展示会などリアルイベントでの獲得を含む)、顧客化CVR16%を達成したそうです。
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5.デクセリアルズ株式会社:電子部品、接合材料などの製造・販売
デクセリアルズ株式会社がHubSpot導入前に抱えていた課題は、展示会などで得られた見込み客のリストをマーケティング部門の担当者が属人的に管理していたためチーム全体のリード数や進捗状況を把握しづらい状態だった、マーケティング部門と営業部門など社内の情報受け渡しに工数や時間がかかっていたことの2点でした。HubSpot導入により属人化の解消や社内でのデータ連携が向上することにより、問い合わせフローが6分の1に圧縮されるなどスピードが向上するなどの効果がありました。
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6. ポジウィル株式会社:オンライン・キャリアコーチング
キャリアに漠然とした不安を抱えている方に対しプロのアドバイザーが自己分析の支援をする同社は、相談者との面談が一日数十件設定されることも。必然的にスケジュール調整が煩雑となり、問い合わせへの対応工数が大きくなるため、HubSpot導入をきっかけにマーケティングも含めた顧客管理をCRMで行うこととなりました。面談はSales Hubのミーティング設定機能によりGoogleカレンダーと連携されたミーティング調整用のURLを相談者に送ることで作業工数がほぼ0に。また、流入チャネル別に管理されていた顧客情報が集約され、データ分析や戦略設計に時間を費やせるようになりました。
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7.ランスタッド株式会社:人材派遣サービス、紹介予定派遣サービスなど
オランダに本社があるランスタッド株式会社はBtoB領域でのリードナーチャリングを目的にMAツールの導入を検討していましたが、本社や他国の拠点で好評だったことから、日本法人でもHubSpotを導入することとなりました。導入にあたり、他国拠点の事例を参考にBtoC(求職者向け)の施策も行えるよう対応を行い、これまで課題だった、求職者とのコミュニケーションについてもこれまでのメール、SMSからLINE連携の導入でより迅速なコミュニケーションが可能となり、求職者からの返信率が向上しました。
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8.東急リゾート株式会社:マンション販売やリゾート会員権の販売
東急リゾートが別荘の仲介をインバウンドマーケティングに切り替えるきっかけはリーマンショック後のリゾート情報サイトが続々と閉鎖してしまったことでした。それまでも自社サイトで様々な情報を発信していましたが、商談クローズまで到達する率が低いという問題を抱えており、新たに自社でオウンドメディアとなるリゾート情報サイトを立ち上げることになりました。当初は自社でツールから開発しようとしていたところ、HubSpotの存在を知り、採用することになったそうです。
経営層との合意を取り付けるため、東急リゾートでは契約数を明確な目標として設定することにこだわりました。サイトリニューアルを地道に行い、現在では自社のリゾート情報サイトを見たお客様と見ていないお客様では、その後物件の下見に結びつく比率が2.5倍も変わるまでになったそうです。
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9.アンカー・ジャパン株式会社:デジタル関連製品の開発・製造・販売
製品数が多い上、新製品も短いサイクルでローンチされるアンカー・ジャパンはWeb接客などを複数のツールを併用して行っていました。また、購入前の相談などの問い合わせも多く、営業部門やカスタマーサービス部門の業務改善が課題になっていました。HubSpotはCRMを軸にMA機能やSFA、カスタマーサポート支援機能が揃っており、ツール統一によるマーケティングにかかる工数削減だけでなく、カスタマーサポートの問い合わせ時のやりとりが平均値で減少(2.0回→1.6回)するなど、大きな成果が出ました。
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10.株式会社ロイヤルホテル
「リーガロイヤルホテル」などを運営するロイヤルホテルはサイトリニューアルのタイミングでHubspotを導入。元々WordPressで構築したサイトをHubSpotへ移行しましたが、HubSpot CMSの独自テンプレートやMAツール導入により、0からサイトを構築するよりもリニューアルにかかる費用や改修に必要な日数を削減できたようです。現在では宿泊情報などのシステムをHubSpotで管理しています。
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3.HubSpot導入事例のまとめ
MAツールを導入すると聞くと主にBtoB向けの商談管理ツールというイメージがあるかもしれませんが、BtoCでの利用事例なども紹介しました。HubSpotの強みである複数機能(ハブ)を横断できるところが導入の決め手となっている企業が多いように感じました。自社単独でインバウンドマーケティング導入に踏み込もうとしても、セミナーや独学だけでは担当者のスキルによっては導入が難しく、HubSpot導入に関するパートナー企業の協力を得て成功に導いた企業もありました。このサイトではパートナー企業の一覧及びポイントをまとめた記事がありますので、ぜひそちらもご覧ください。